[新作落語]癇癪(かんしゃく)寿司

テン・テン・ツク・テン・テケ・テン・テン・テケ・ツク・テン・シャン・テン・の・スッ・テケ・テン・・・ 

ようこそのお運びでございます。え〜、世の中ア本物が人気がありますと、それにあやかろう

ってんで、偽物が出て参りますな。


 客    「おう大将、きょうは久しぶりに寿司でも食おうと思って

      ちょいと暖簾(のれん)をくぐったんだが、

      大将んとこの鮪(マグロ)なぁ・・      

      ここんとこは、ちょいと聞きにくいんだが・・」

 寿司や  「なんでぇ、聞きにくかったら聞かなきゃあいいだろう」

 客    「いいや、聞いとかねぇと、どうも落ち着かねぇ・・」 

寿司や  「じれってぇやろうだな。だったら、さっさと聞いたらどうだ」 

客    「じゃ、聞くからな。いいか・・。気を悪くしねぇで聞いてくれよ」 

寿司や  「もってぇぶってねぇで、さっさと聞きやがれ。こちとら、調理で忙しいんだ」 客    「ちょいと、そんなに包丁を振り回さないでおくれ。

      あのな、大将んとこの鮪は、とよ、とと、・・・」 

寿司や  「おう、だれか水もってきて、飲ませてやれ。忙しいのに、世話の焼ける客だ」 客    「ふーっ、あぁ、一息ついた・・」 

寿司や  「おう、おめぇさんの聞きてぇことって、アレだろ。・・後ろの壁を見てみな」 客    「え、壁・・?あぁ、貼り紙があるね。なになに・・、

      当店の刺身には、どれにも【合格】の焼き印が押してあります・・

      刺身に焼き印かい・・?」 

寿司や  「それで、どうなんだ? 食うのか食わねえのか? じれってえな」 

客    「え、そそうだな。合格の判定は農水省かい」 

寿司や  「なにを!! 農水省だあ!? ベラボーめエ!! 

      そんなとこに任せてた日にゃあ、あっというまに百年くらい経っちまわあ!!

      しょーがねえから、おれが判定を下したのよ。

      食うのか、食わねえのか、どっちだーっ!!」 

客    「サイナラ−・・・」 

寿司や  「おととい来やがれ! 唐変木(とうへんぼく)め!」 


 これでは、商売になりません・・。見かねたご隠居が・・・ 


 ご隠居  「これこれ、そうお前さんみたいに、つんけんつんけんいってたら、

      客が来なくなる。もっと愛想よく出来ないのかい?」 

寿司や  「へい、そいつア、あっしも分かってるンすがね、

       怒ってねえと、どーも生きてる気がしねえんで・・」 


 お後がよろしいようで・・    

日々の印象

なんとなくホッとするかもしれない憩いの空間

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